サイト運用

運用型広告の担当者必見!自動最適化の効果を高めるダイアグラムとは

公開日:2017/02/24

本間 和城

株式会社インタースペース所属 日本ディレクション協会 副会長

本間 和城

昨今アドテクノロジー領域において、「運用型広告の自動最適化」の精度が数年で大きく高まり、運用オペレーションを機械に任せることができる場面が増えました。本連載では、マーケターがその中で何をすべきかを考えます。今回は、答えの一つとして、自動最適化では賄いきれない「コンバージョンに導くための全体の道筋を考えること」、道筋の中での「ユーザーとのコミュニケーションを設計すること」について解説します。

※本記事は、Markezine(マーケジン)掲載コラムを、Markezineの許可を得て転載しています。
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昨今の検索連動型広告やアドネットワーク、DSP、ソーシャル広告など、一般的に運用型広告と呼ばれる広告のほとんどに「自動最適化」機能が実装されています。

同機能では、過去の広告配信実績や3rdパーティのクッキー情報などを利用し、目標CPAやコンバージョン数を達成するよう自動的に調整します。広告の運用以外にも複雑かつ多岐にわたる作業を行うマーケターにとって、自動最適化機能は必要不可欠といっても過言ではありません。

具体的には、自動最適化機能を導入すると以下の効果が期待できます。

  • ・1人1人に最適な広告を、自動でベストなタイミングに配信できる(One to Oneの実現)
  • ・機械(システム)が自動で広告効果に合わせて改善を加える(自動入札調整)
  • ・現在の配信状況から、各キャンペーンの予算を適切に分配できる

一部媒体や自動最適化ツールによっては、広告クリエイティブの自動生成までアルゴリズムを利用して行うこともできます。

このように「機械(システム)が適切に調整する」自動最適化機能ですが、活用する際にマーケターや広告担当者が考えるべきこととはなんでしょうか。その答えを紐解くには、自動最適化によってできること、できないことを整理するところから始めていかなければいけません。

自動最適化機能によって、CPAを目標に合わせることは人が頭を悩ませずともできるようになりました。「〇〇な時間帯に、△△をしている□□なユーザーに最もクリックされるクリエイティブ」といった極限までセグメントされた高精度な実績をもとに、配信のオンオフや強弱をつけることは、人の手では到底行えません。それを同機能では、容易に行うことができます。

しかし私の経験上、「ある一定までは自動最適化機能で効果的に運用できるが、そこから伸びない」というケースがよく起こります。

原因としては、良いものを伸ばし、悪いものを止めるというシステマチックな運用の限界が挙げられます。少なくとも現状の自動最適化は「過去のデータをもとに、最適な広告配信を行っていく」仕組みであり、効果の善し悪しの判断から次のアクションにつなげる機能です。ただ、広告運用においては、他にも考慮しなければならない項目があります。特に下記二つを行うのは、自動最適化機能ではまだ難しいと考えています。

  • ・経験値のない新しいクリエイティブやキャンペーン
  • ・データだけでは見えないユーザーの感情の変化

■ユーザー感情の変化

自動最適化機能は、広告効果の良し悪しを判断する際、CTRやCVR、CPAといった定量データを使います。ユーザーの動きを「クリックする/しない」「コンバージョンする/しない」といったデータの合算値のみで改善することで、「なぜこのユーザーはクリックしなかったのか」「このユーザーをクリックやコンバージョンに導くためにはどうすればいいのか」といったユーザーの感情の変化に気づくことはできません。

つまり人がすべきは、このユーザーの感情の変化を仮説立て、適切に利用や購入まで至らせるまでの道筋を考えることなのです。

広告や集客の担当者は、ターゲットとしているユーザーの「感情をどう変化させるか」ということをベースに、クリエイティブ設計を行う必要があります。その上で、仮説通りにユーザーの感情が変化してコンバージョンにつながったかを効果検証する。このように、自動最適化では行えないところを人の手や頭で考え改善することで、自動最適化の恩恵をより一層受けることができます。

ここからは、どのようにユーザーの感情を変化させるのかについて解説します。私の場合、「モチベーションや欲求の強さ」と「サービス理解度」の2軸、4象限にまたがる4つの矢印によるダイアグラムを描き設計します。

その後設計したダイアグラムをもとに、ユーザー感情の変化が仮説通りに起きているか否かを検証し改善につなげていきます。

続いて、ダイアグラムの作り方を説明します。まず縦軸にサービスの理解度を置きます。この軸の数値が高い人は「サービスを認知・理解している」という認識です。しかし、知っているだけで「利用したい」となる人はそう多くないはず。

そこで、横軸の「モチベーションや欲求の強さ」が必要になってきます。つまり「したい!」と思わせる感情の変化を設計していかなければいけません。

逆に、「したい!」と思っている人も、自社のサービスを知らなければコンバージョンには至りません。もし知っていたとしても、競合サービスよりも自社サービスが魅力的に映っていなければ、選ばれません。

つまり、仮説をもとにペルソナを構築し、先述のダイアグラム上にユーザーの感情や行動を描き、線で結ぶ。その線を誘発させるものがプロモーションでありクリエイティブになってくるのです。

実際の例はこのようなものです。こちらは旅行代理店を例にしたダイアグラム上での感情変化です。

AISASのような一次元の購買行動モデルとは違い、感情の変化が分岐することもあります。複雑になってしまいますが、一般的なマーケティングファネルの「前に進む」か「歩留まりするか」の二元論ではなく、感情という条件を追加することでユーザー行動全体に網を張れるイメージです。

検索連動型広告におけるキーワード、ディスプレイ広告のターゲティングおよび掲載面は、このダイアグラムの中にある感情にあたります。そして、感情Aから感情Bに変移させるためにクリエイティブが存在します。感情Bから次の感情Cを感じさせるためにLPやサイトが存在します。

つまりこのダイアグラムは、広告領域だけで完結するものではなく、LPやサイトの導線まで一括で表現するものになります。また、ユーザーは広告を含め複数の情報に触れることで、商品理解とモチベーションが向上していった結果、コンバージョンに至るのです。

  • ・その広告に触れた瞬間に何を期待するのか(瞬間的)
  • ・広告からLPに飛んだ時、どのような情報を得るのか(エピソード的)
  • ・複数の情報を覚え、商品の魅力やニーズがいかに蓄積されるか(蓄積的)

※UXでよく用いられる時間軸の概念を一部利用

感情の変化を仮説立てた上で、上記のポイントをもとにプロモーションを設計。その上で、クリエイティブやターゲティングを考えることで、良いユーザー体験は完成します。

このように感情の変化を促す広告キャンペーンを作成する場合、以下の図をイメージすることが重要です。

瞬間的に何を期待し、そこで何を得るのか、その情報蓄積の結果コンバージョンに近づく。このダイアグラムをベースに、実際のキャンペーン設計やクリエイティブに落とし込んでいます。

様々な種類の広告手法がありますが、ターゲティングやクリエイティブを調整すれば、基本的にはこのダイアグラムで表現することができます。

ここでは一つ、検索連動型広告を例にとり具体的な手法を見ていきましょう。

■検索クエリでダイアグラムを描く

先ほどの感情変化を表すダイアグラムをすべて検索クエリに置き換えます。そのクエリに対して、次の感情に導くのが広告文、その広告文の先の感情がLPという具合です。転職エージェントを例に記載しました。

右上に行けばいくほど、ユーザーが求める情報は細かくなっていきます。一つの検索クエリに対して、右隣や上隣のクエリが、恐らく次にユーザーが欲しがる情報です。その欲しがる情報を広告文やLPで訴求をしていくということが大切なのです。

たとえば「転職」という検索クエリに対して、隣にあるのは「転職エージェント」や「求人サイト」。これは転職をするための手法にあたるクエリです。そのため、転職と検索したユーザーに対しては、転職をする手法(エージェントを利用するか、求人を自ら探すか)という選択肢を提供し、レコメンドする必要があるかもしれません。

ただ、自社サイトでは拾いきれない検索クエリ「○○ 口コミ」や「○○ 評判」などもダイアグラム上に出てきます。

検索ユーザーとしては第三者的なフラットな視点で商品を知りたいと思っているので、そこに自社で直接リーチしてもユーザーが求める情報にはなりません。

そういった場合は、アフィリエイトを利用した、比較サイトや口コミサイトへの広告掲載で補うという方法も考えられますね。

今回は自動最適化では行えない、ユーザー感情を中心にした広告設計をお話ししてきました。当然、自動最適化を含めたアドテクノロジーの知識や、それを有効的に使うためのスキルセットは今後必ず必要になってきます。

「多くの知見を身につけ、様々な技術を知る」という行為そのものは推奨するべきものですが、あまりに便利になり、その便利さに目を奪われすぎて、根本のユーザー感情を動かすという課題から目を背ける方が、多いような気がしています。

広告を含め、マーケティングの根幹にあるものはユーザーとのコミュニケーションです。テクノロジーによる自動最適では見えてこない、「人の感情が動き、行動が変わるポイント」を設計すること。それこそがテクノロジーが発達している時代のマーケターに求められているスキルセットだと、私は思っています。

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本間 和城

株式会社インタースペース所属 日本ディレクション協会 副会長

本間 和城

アクセストレードを運用し、Web広告を活用したプロモーション戦略の企画〜運用までを担当。新規サービスの立ち上げや事業アライアンスも行う。
2015年より一般社団法人 日本ディレクション協会の副会長に就任。企業研修や外部講演で、Webマーケティング・広告・サービス設計など幅広いテーマで講演を実施。
2016年8月、マイナビ出版より『基礎から学ぶWeb広告の成功法則』を単著で出版。

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